私は最初からポリヴェーガル理論を学ぼうと思っていたわけではありません。
むしろ、自分自身の人生を振り返ったときに感じていた「なぜ?」を追いかけていった結果、たどり着いたのがポリヴェーガル理論でした。
子どもの頃の私は、人前で声が出なくなる子どもでした。今でいう場面緘黙です。
家では普通に話せるのに、学校では声が出ない。
頭では話そうと思っているのに、身体が動かない。
当時は「恥ずかしがり屋」「内気な性格」と言われましたが、自分ではどうしてそうなるのか説明できませんでした。
大人になってからも、人前では緊張しやすく、郵便局の窓口で働いていた頃は、何度もお客様に聞き返されていました。
もっと話し方を学べばいい。
もっと自信をつければいい。
そう思って様々な方法を試しました。
けれど、本当に変化を感じたのは、話し方そのものではなく、呼吸や身体を整え始めてからでした。
呼吸が深くなると不思議と声が出る。
肩の力が抜けると人と話しやすくなる。
身体が安心すると心も落ち着く。
私はその体験を通して、「人は頭だけで生きているのではない」と感じるようになりました。
その後、アドラー心理学や認知行動療法、エリクソン催眠、ゲシュタルト療法など様々な心理学を学びました。
どれも素晴らしい理論です。
しかし、ある疑問が残りました。
なぜ良い考え方を知っているのに変われない人がいるのだろう。
なぜカウンセリングを受けても苦しさが残る人がいるのだろう。
なぜ「大丈夫」と頭で理解しても身体は緊張したままなのだろう。
その答えを探している中で出会ったのがポリヴェーガル理論でした。
そこには、
「人はまず安全を感じることが大切である」
という考え方がありました。
人は安全を感じると、人とつながり、学び、成長できます。
反対に危険を感じると、闘うか、逃げるか、固まるかという反応が起きます。
私はその説明を読んだとき、
「これだ」
と思いました。
子どもの頃の私が声を出せなかった理由。
緊張すると身体が固まる理由。
呼吸を整えると声が変わる理由。
それまでバラバラだった体験が、一つにつながったのです。
だから私にとってポリヴェーガル理論は、単なる学問ではありません。
身体と心と魂がどのようにつながっているのかを理解するための地図です。
そして今、私が呼吸や声のワークをお伝えしているのも、話し方を上手にするためだけではありません。
まず身体に「大丈夫だよ」と伝えるためです。
人生の軸を整え、本来の自分とつながり、安心できる世界を取り戻すためです。


