「感じる・考える・動く」をつなぐ、見えない力
日常のちょっとした「うまくいかない」。
たとえば…
- 服のタグがチクチクして着られない
- 音が気になって集中できない
- 片付けや着替えがうまくできない
- 人との距離感がつかみにくい
こうした感覚や行動の“困りごと”の背景には、
「感覚統合」の問題があるかもしれません。
感覚統合って、なに?
私たちの体には、7つ以上の感覚があります。
- 視覚(見る)
- 聴覚(聞く)
- 触覚(触れる)
- 味覚(味わう)
- 嗅覚(におい)
- 前庭覚(バランス・動き)
- 固有受容覚(筋肉や関節の動き・位置)
これらの情報が脳に届き、
適切に整理・統合・意味づけされることで、
私たちは自然に「考える・感じる・動く」ことができています。
この一連のプロセスが**「感覚統合」**です。
感覚統合がうまくいくと…
たとえばこんなことがスムーズになります:
- 👣 歩きながら話す
- 🍴 食事をする
- 🧥 服を着替える
- 🧠 教室で話を聞きながらノートをとる
- 💬 相手の表情や声のトーンを読み取って反応する
これらはすべて、「複数の感覚」を同時に使っている行動。
感覚統合がスムーズに働いているからこそ、自然にできているのです。
感覚統合がうまくいかないと…?
感覚が過敏すぎたり、逆に鈍すぎたりすると、日常生活にさまざまな影響が出てきます。
🔊 感覚過敏・鈍麻
- 音、光、触覚に敏感でパニックになりやすい
- 人混みや強いにおいが苦手
- 逆に痛みに気づかない、熱さがわからないなど
📉 集中力や注意力の低下
- 周囲の刺激に気を取られやすく、話に集中できない
- 不注意・ミスが多くなる
🚶♂️ 運動や生活動作の不器用さ
- 縄跳びやボール遊びが苦手
- 着替えや片づけがスムーズにできない
🧍♀️ 社会性や人間関係の困難
- 距離感をうまくつかめず、友達づきあいがぎこちない
- 集団の中で浮いてしまう
🏠 家庭生活への影響
- 特定の服や食べ物を拒否する
- 生活リズムが乱れがち
- ストレスが多く、親子関係にも緊張が走りやすい
💭 情緒面・メンタルへの影響
- 不安やイライラが強くなる
- 自己肯定感の低下
- 抑うつ的になりやすい
🧑💼 成人にも影響
- 職場の音や照明でストレス
- 突然の予定変更に対応できない
- 周囲との摩擦、適応困難
感覚統合の“困りごと”に気づいたら?
感覚統合の課題は「見えにくい」だけに、
本人も周囲も気づきにくく、長く悩みを抱えてしまうことがあります。
でも大丈夫。
- 環境調整(音を減らす、感触に合う衣類を選ぶ)
- 感覚統合療法(SI療法)
- OT(作業療法士)によるサポート
- 家庭や学校での配慮
など、支援の方法はたくさんあります。
まとめ|「できない」ではなく、「脳の働き方のちがい」
感覚統合の視点から見てみると、
「どうしてこんなことができないの?」という問いが、
「どんな感覚が負担になっているのかな?」という理解に変わります。
子どもも大人も、「心と体がうまくつながらない感じ」があるときは、
感覚統合の視点で自分や周囲を見つめ直してみてください。
苦手は、努力不足じゃないかもしれない。
感覚の調律が、ちょっとズレているだけかもしれない。
その“ちがい”に気づくことが、
生きやすさへの第一歩になります。